ツジ ヨシヒロ   TSUJI Yoshihiro
  辻 吉祥
   所属   青山学院大学  コミュニティ人間科学部 コミュニティ人間科学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2013/12
形態種別 大学・研究所等紀要
査読 査読あり
標題 統制と共生をめぐる文学――その事例Ⅰ・井上光晴
執筆形態 単独
掲載誌名 『青山学院女子短期大学 総合文化研究所年報』
掲載区分国内
出版社・発行元 青山学院女子短期大学総合文化研究所 編
巻・号・頁 (21),85-98頁
著者・共著者 12月20日発行
概要 東日本大震災後、一九八六年発表の原発小説、井上光晴『西海原子力発電所』に再度注目が集まっている。だがむろん、この注目は同時に、完全に3・11以降の現在の事態に対して手遅れである。言うまでもなく井上光晴は、つねに想像力が現実に先んじることを小説の根本原則としていたからである。
ならば今日、そこに読み取れるものは何か。原発の設置された地域の人々、その生活、その言葉。その歪み、倒錯、空疎な殷賑、分断の共同体と仲間、虚ろな生、背を向けあう空疎な言葉。エネルギー権力そのものではなく、日常の生活にひずみを加えるそのありかたから、エネルギー権力の姿をとらえる。これは、井上光晴が炭鉱離職者を生涯のテーマとして以来、一貫して追及したひとつの権力のあり方である。
現在に生きる人々の日々に統制を加える〈力〉としてのエネルギー権力。これはこれまで政治権力の陰に隠れ、その追及をまぬかれてきたが、実は、これこそ私たちの生を、生活においても精神においてもまさにエネルギーの供給というレベルで豊かにする顔をもちつつ、締め上げるものである。その相対化と解体の未来を見据える。