ニシモト アヅサ
NISHIMOTO Azusa
西本 あづさ 所属 青山学院大学 文学部 英米文学科 職種 教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 2019/03 |
形態種別 | 学術雑誌 |
査読 | 査読あり |
標題 | 『タール・ベイビー』のジェイド・チャイルズを(再)想像する──「村落文学」、幻の映画脚本、そしてポスト・ソウル世代の声 |
執筆形態 | 単独 |
掲載誌名 | 黒人研究 |
掲載区分 | 国内 |
出版社・発行元 | 黒人研究学会 |
巻・号・頁 | (88),43-52頁 |
概要 | 本稿では、ポスト公民権運動時代のアフリカ系アメリカ文学・文化の形成にモリスン文学が果たした役割を分析する研究の一端として、『タール・ベイビー』(1981)で扱われる民族文化の継承の問題を、中心人物の一人ジェイディーン・チャイルズに焦点を当てて考察した。まず、初期批評においてジェイディーンに向けられた否定的な評価に、作家と同時代の批評家が共有した民族文化を取り巻く急激な変化への危機感を読み取り、モリスンがばらばらになりそうな民族とその文化をつなぎとめるため構想した「村落文学」について検討した。次に、同小説の草稿とモリスンとトニ・ケイド・バンバーラ(Toni Cade Bambara, 1939-1995)が手掛けた未発表映画脚本のエンディングの分析から、1980年代初めという時代がジェイディーンに想定し期待した黒人女性像を探った。最後に、80年代末から声を上げ始めるポスト・ソウル世代とジェイディーンとの呼応関係を指摘し、彼女の物語を当事者として語り出す新しい声の出現を確認した。そして、『タール・ベイビー』が、古い物語に新たな意味を吹き込みつつ更新する語りの声を誘い出す「村落文学」の役割を実践していたと結論づけた。 |